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横須賀・三浦の日帰り旅

三崎口に息づく日本の原風景! 生態系の宝庫・小網代の森を往く

更新)

首都圏に残された大自然の秘境

誘われるまま、日本の原風景が残された地へ

自然が豊かなことで知られる日本ですが、開発が進むにつれ、森林の伐採や造成など環境破壊の問題も耳にすることが多い今日この頃。それでも海外からは日本の持つ美しい自然美を求めて観光客が押し寄せています。なかでも近年、注目を浴びているのが三浦半島にある小網代の森。絶滅危惧種を含む、2000種類以上の動植物の姿を間近で見られる、大自然の宝箱が、この地にあることをご存知だったでしょうか?

 

京浜急行の終点「三崎口駅」からバスで約7分。「引橋」で下車をすると、そこはもう小網代の森の入り口です。今回は毎月第三日曜日に開催されるボランティアツアーに同行、大自然の豊かな恵みを体験してきました。

 

大型スーパー「ベイシア三浦店」の2階にある三浦市民交流センター。その一角に「小網代の森インフォメーションスペース」があります。小網代の森で見られる多くの動植物や自然環境がパネル展示され、また、散策路についてもマップが表示されています。ここは三浦市、かながわトラストみどり財団、NPO法人小網代野外活動調整会議の協働で運営されており、自然観察や保全活動などの情報発信の拠点となっているのです。

京浜急行三崎口駅前からバスで約7分。大型スーパーBeisia2階がツアーの集合場所。

2階にある三浦市民交流センター ニナイテには、小網代の森専用のスペースがある。インフォメーションで登録をすませよう。

今回、ガイドしてくださったのは東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一さん。慶応大学在学中、かつての里山だった小網代一帯に大規模開発の計画があることを知って、代案提示活動を進めていた恩師の岸由二教授に付き添い小網代を訪問。以来、この地の保全・管理を担ってこられたメンバーのひとりです。

東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一さん。小網代の森に対する愛情に溢れ、今回のガイド役を担ってくださった。

晴天に恵まれた日曜日の朝、9月末だというのに残暑というより未だに酷暑に近い気候。しかしすぐ近くには、涼しげに青々とした新緑の木々が生い茂る小網代の森が息をひそめています。スタートするときには青空が広がり、これからのツアーへの期待感が高まっていきます。この日の参加者は13名。地元の方ではなく、首都圏や他府県からの参加者がほとんどでした。

今回の参加者は関東近県の方を中心とした13名。

森の散策なので、動きやすい恰好がおすすめ!

入り口付近には小網代の森への案内図と、不法投棄への注意看板。国民の財産ともいえるこの自然環境の案内だけでなく、保全にも抜かりはない体制と、日々のご尽力に頭が下がります。これらを通り過ぎ、森の木々が織りなす道を少し下ると、小網代の森・引橋入り口です。

開かれた商業施設から景色は一変、両サイドには森の緑が肉薄する。

引橋入り口で、柳瀬さんから小網代の森の歴史や散策時の注意点をお聞きしたら、さっそく大自然のなかへ!

関東地方唯一といわれる秘境の旅へ!

柳瀬さんによる小網代の森全体の地形と小網代愛に溢れたこの地の解説に耳を傾けたあと、いよいよ三浦のジャングルとでもいうべき秘境感の真っただ中に一歩を踏み出しました。すでに30℃は超えているであろう気温ではありましたが、天然の緑のカーテンが厳しい日差しから守ってくれます。日当たりはいいのにどこか涼しげな感じが、自然本来の持ち合わせるバランスなのかもしれません。

気温は高いのに、生い茂る木々が熱気を遮る天然のカーテンとなっている緑のカーテン。

階段を使い、一行は尾根から谷のなかへと下っていきます。この階段を下り始めると、そこはすでに別世界。周囲に満ちた空気は芳醇な森の香りを漂わせ、訪れた人たちを歓迎してくれているかのような優しさに溢れています。また、散策路の脇には、引橋近辺を水源とする小川が流れており、そこから聞こえるせせらぎの音が自然の豊かさを物語っています。生い茂る森の木々の間を歩くと、ジュラシックパークの世界ともいえるような光景が広がります。ちょっとしたアドベンチャー気分にも浸れるとは、まさにこのことなのでしょう。

山間から湧き出た一筋の湧水が集まり、小川となって海へと流れていく。河川の源流から河口までのミニモデルのような光景が続く。

生い茂る森を抜けても、麓に広がる草は太陽の光を浴びて人の背丈ほど伸びている。

この大自然を守ってきたのは人の手だった!

ところで小網代の森は、ところで小網代の森は、特別保全地区に指定されていて、訪問者が歩けるのは源流から海岸に至る延長1.4kmの散策路。散策路には尾瀬と見間違えるような湿地も広がっています。森の中を流れる源流から広い湿地を抜け、河口の干潟まで流域の生態系がまるごと残された場所というのは、国内でもごくわずか。首都圏や関東地方では当地が唯一といわれ、その貴重さは西表島レベルともいわれています。5月下旬にはホタルが飛び交い、川岸にはアカテガニの巣穴が見える、日本古来の海辺の原風景が生態学の理論を応用して「創出」された場所なのです。

湿原に達すると一面の視界が大きく開かれ、その広大さに驚愕する。

散策路途中に作られた木製デッキの「えのきテラス」。長い道のりで一息入れることができるスポットだ。

ハマカンゾウは海辺に生える常緑の多年草。

ノカンゾウ(野萱草)の海岸型で沿岸の崖っぷちで

多く見られるが砂地にも生える。

お馴染みのヒガンバナは、実は史前帰化植物に分類される。

お彼岸の時期に咲くことからこの名がついた。

近年、その個体数を減らしているともいわれるシオカラトンボの雄。

雄は成熟すると体が塩を吹いたような青白い色になる。

素晴らしい大自然のなかを案内してくださった柳瀬さんから、やなぎテラスで小網代野外活動調整会議代表理事の岸由二さんへとバトンタッチ。柳瀬さんの恩師でもある名誉教授の岸さんは、現在も現役の進化生態学者。小網代の森がいかに貴重で素晴らしいか、など楽しくお話を聞かせていただきました。

小網代野外活動調整会議代表理事の岸由二さん。

日本の宝ともいえる小網代の森を守ってくださった第一人者のひとり。

日本という国は、古くから奥山を残しつつ、その土地に住む人たちの手によって里山が形成され、豊かな自然というものが適度な人とのかかわりによって守られてきました。森林や草原、田畑や池が混在するこの里山では、そこで生活する人によって薪が集められ、農業を生活のなかに取り入れながらコミュニティーを形成し、何世代にもわたり維持されてきたのです。残念ながら、近年はライフスタイルの変化の影響もあり、里山を利用した生活様式が失われつつあります。そのため、里山が放置された状態に陥り、そうした環境を好んだ動植物が姿を消すという悲しい状況となっています。これは生物多様性が失われてしまうという危機に直面しているとも言えるのです。

 

私たちにできること、それは持続可能な社会のモデルであった里山を改めて考えること。生物多様性をしっかりと保全し、管理・利用・維持することで地域コミュニティーを蘇らせる。稀薄してしまった現代社会において、美しく残された環境の裏側には、古き良き時代を取り戻すヒントが眠っています。大自然に触れてリフレッシュできる環境を残すためにも、観光という視点のみならず、環境保全という立場も持ち合わせながら楽しむことが、持続可能な社会を生み出していくのかもしれませんね。

 

 

お問い合わせ先

NPO法人小網代野外活動調整会議

 

取材・撮影 OFFICE-SANGA 山河宗太(夏島運輸)

原風景を守るためには、雑草刈りが欠かせない。

貴重な体験をさせていただいたお礼に、参加者全員で少しだけお手伝い!

小網代の森を流れる小川が注ぐ小網代湾。この大自然の光景を守れるのは私たち人間だけだ。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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